野島伸司のドラマから考察する「赤と青による人間の真理」3【聖者の行進】

seija

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1: 野島伸司のドラマから考察する「赤と青による人間の真理」【ストロベリー・オンザ・ショートケーキ】
2:「赤と青による人間の真理」

前回、野島伸司氏脚本のテレビドラマ「ストロベリーオンザショートケーキ」が、「赤と青による人間の真理」を分かりやすく解説した法則ドラマと書いた。その文末に「同じような演出をしてる作品が実はもうひとつある」と書いたが、そのドラマは「聖者の行進」だ。

「聖者の行進」を簡単に説明すると、社会問題になっていた実際の事件水戸事件を題材にし、知的障害者を雇用してる工場を舞台に、現代社会の在り方、問題点をストレートに書いた、ものすごいパッションの作品だ。主役はいしだ壱成で、知的障害者という難しい役なのに、演技が半端なく素晴らしい。

聖者の行進について思う事はたくさんあるが、今回は「赤と青と人間の関係性」、つまり主人公のいしだ壱成が演じる町田永遠(とわ)と、ヒロインの広末涼子演じる土屋ありすの、この二人だけにフューチャーしたいと思う。

ちなみに、これもストロベリーオンザショートケーキ と同様に、ネタばれというか内容を言っちゃうので、これからナチュラルに見たい人は注意してください。

赤と青の心理について

まずはじめに赤と青の心理について前回に詳しく書いたが簡単に書くと、

赤と青についてイメージされる自然物は、
「赤」…炎、夕日など。炎や夕日などの赤は、少ししか姿を表さなく、まるでジェットコースターみたいに山なりに起伏が激しく情熱的に燃えそしてなくなる。

「青」…空、海。海や空などの青は、永遠に続くイメージがあり、静かで大人しい雰囲気で、さーっと平行に果てしなく続く。

これを人間に置き換えると、一番力が発揮する時に全力で立ち向かい、後先の事など考えない、ジェットコースターみたいな人が赤。
大きな冒険もしないが大きな失敗もしたくない、いつまでも平和を望む、水平線な人は青。となる。

色グラフ

聖者の行進

この事をふまえ主人公とヒロインを見てみると、

主人公の永遠(とわ)

町田永遠

ありす
ありす

 

主人公のとわは、ずーっと青い服を着ている。青いトレーナーに青いカーディガン、青い傘と、徹底的だ。
いっぽうヒロインのありすは、超真面目な学校の生徒でありながら、真っ赤な髪型で登場。

 

更に名前。「とわ」という名前は文字通り永遠という意味。永遠につづくと連想する海や空みたいに、名前も「青」だ。
ありすという名前も、短い間に色んな事がいっぱい起こる「不思議の国のアリス」からとってると思う。
上記の事から、とわが青い人間で、ありすが赤い人間という事がわかる。

 

何がすごいかって、この二人の結末がすごい。

 

 

 

 

とわはありすの事が好きになり、 ありすも様々な葛藤がありながらもだんだんと心を許していく。
 

そんな中、ありすが死ぬ。
 

知的障害者のとわは、彼女の死の意味がわからない。
 

「死」を理解する事が不可能なのだ。
 

激しく燃え、消えていった赤いありすを、青いとわは、永遠に澄んだ心で想いつづける。

 

 

とても美しくとても悲しい。
野島伸司は、ドラマを通して「愛」について異常なくらい探求するけど、この二人はある意味究極の愛なんじゃないかと思う。(野島伸司氏の最強に愛を追求したドラマ作品は「世紀末の詩」だが、その7話「恋するコッペパン」は共通する部分があるのかなと思う)

聖者の行進は、障がい者と健常者の在り方という社会問題がメインテーマだが、サブの永遠とありすの物語を考察すると 「赤と青による人間の真理」を完璧にそして美しく落とし込んだ作品だと言える。 ストロベリーオンザショートケーキと一緒にこのドラマもこういったちょっと違う視点から見るとおもしろいと思います。

 

 

 

野島伸司作品ではないけど、赤と青を使った有名なアニメがあるので、それを次回紹介したいと思います。

 

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